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一般社団法人 日本ゲームファイ協会(仮)

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GUIDELINE

アニカナ利用ガイドライン

本ガイドラインは、分散型エンジンで自律的に稼働するブロックチェーンであるアニカナ(以下「アニカナ」という。)の利用に関するいくつかの留意事項(網羅的なものではありません。)をまとめたものです。アニカナの利用者は、本ガイドラインを熟読し、理解し、その趣旨を遵守してアニカナを利用しなければなりません。本ガイドラインの趣旨に反してアニカナを利用した者は、一般社団法人日本アニカナ業協会から指導及び厳重注意(協会員の場合は除名)されることがあります。

1.総論

アニカナを利用したサービス及びその他のゲームコンテンツ等(以下「コンテンツ」といいます。)を公開し、又は公開しようとする者(以下「パブリッシャー」といいます。)は、コンテンツが提供される国・地域において、当該コンテンツを運営すること又は遊戯することが違法となるコンテンツや、当該国・地域において公序良俗に反するコンテンツ等を公開することはできません。以下では、パブリッシャーによる開発の便宜のため、ブロックチェーン上の各種コンテンツに関し、特に違法・公序良俗違反と評価される可能性の高いコンテンツの典型的な類型を日本法に沿った形で例示します。ただし、これらは網羅的な説明ではなく、パブリッシャーは、自らが提供しようとしているコンテンツが、当該国・地域等の法令及び社会規範等に違反しないことを現地の弁護士等の専門家に照会するなどして、適法性を確保したコンテンツを開発しなければなりません。

2.賭博罪に該当するコンテンツ

  1. (1)賭博罪の要件について賭博罪(刑法185条)における「賭博」とは、2人以上の者が、偶然の勝敗により(要件①)、財物・財産上の利益(以下「財物等」という。)の得喪を争う行為(要件②)をいいます 。ただし、「一時の娯楽に供する物」を賭けた場合には、本罪は成立しません。以下、各要件の意義を説明します。

    要件 ① 「偶然の勝敗」に関するものであること 「偶然の勝敗」とは、当事者において確実に予見できず、又は自由に支配し得ない状態をいいます。主観的に不確実であることをもって足り、客観的に不確定であることまでを要しません。

    要件 ② 「財物等の得喪を争う」こと 「財物等の得喪を争う」とは、勝者が財物等を得て敗者は財物等を失うという相互的得喪の関係になければならないと解されています。当事者の一方が常に利益を取得する仕組みの場合、財物等の得喪を争うものとはいえないとされています。また、「財物」とは、有体物又は管理可能物に限らず、広く財産上の利益であれば足りるとされているため、暗号資産やNFT(Non Fungible Token=非代替性トークンのことをいい、以下単に「NFT」といいます。)等のブロックチェーン上の財産的価値をもつトークンなどの無体物も広く含むと考えられます。
  2. (2)賭博罪に該当しうるコンテンツの例パブリッシャーとコンテンツ参加者(以下「ユーザー」といいます。)の間において、偶然の勝敗により、財物等の得喪を争う内容のコンテンツを提供する行為は、賭博罪に該当すると考えられます。例えば、ゲームを1回プレイするためにユーザーが一定額以上の金銭(暗号資産による支払を含みます。以下同じ。)をパブリッシャーに支払うことが必要である仕組みのコンテンツや、ユーザーがゲームに勝利した場合には支払金額以上の財産的価値を受け取ることができる反面、ユーザーがゲームに負けた場合には支払金額が返還されない仕組みのコンテンツは、賭博罪に該当する可能性が高いと考えられます。これは、コンテンツの内容がカジノ等のギャンブルに関連するものではなく、通常の対戦ゲームのような内容である場合であっても同様です。

    また、特に留意を要するケースとして、パブリッシャーが、コンテンツ内で、NFTに表示されるアイテム等をパッケージ販売する場合(複数のアイテム等がランダムに含まれるパッケージの販売方法)や、いわゆるガチャ(獲得できるアイテム等がガチャを回した結果に従って決定される販売方法)のような手法で販売する場合が挙げられます。こうした販売手法においては、パブリッシャーとユーザーとの間で財産上の利益の得喪を争う関係が認められると評価されるおそれがあります。ただし、例えば、ユーザーにおいて、その販売価格に応じたアイテム等を獲得しており、ユーザーもパブリッシャーも財物等の得喪を争っていないと評価できる事情があれば、賭博罪には該当しないと整理しうる場合もあると考えられます。いずれにしても、各パブリッシャーにおいて、弁護士等の専門家に照会する等して、適法性を確保したコンテンツを設計していただく必要があります。

3.賭博場開帳図利罪又は賭博罪幇助に該当するコンテンツ

  1. (1)賭博場開帳図利罪の要件について賭博場開帳図利罪は、「賭博場」を「開帳」し、「利益を図った」場合に成立します(刑法186条2項)。
    「賭博場」とは、賭博を行う場所、賭博のための場所的設備を指します 。また「開帳」とは、賭博場の設営に当たって主宰的地位に立つことをいい、自ら主宰者として賭博場を設け、その支配・管理の下に賭博の機会を与えることを要します。「利益を図った」とは、主観的要件として利益を図る目的(図利の目的)に出たことをいい、判例によれば、「その賭場において、賭博をする者から、寺銭、または手数料等の名義をもって、賭場開設の対価として、不法な財産的利得をしようとする意思」をいうとされています(最判昭和24年6月18日刑集3巻7号1094頁)。
  2. (2)賭博罪の幇助の要件について刑法62条は、正犯を幇助した者を従犯とすると定め、同法63条は、従犯の刑は正犯の刑を減軽すると定めています。そして、刑法62条1項の従犯とは、「他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるものである」とされています(最決平成25年4月15日刑集67巻4号437頁)。

    有形の幇助としては、犯罪の道具や場所を提供することが典型で、無形の幇助としては、犯罪に関する情報提供をすることや、精神的に犯意を強めることも含むとされています 。このように、幇助については、正犯の実行を容易にする行為であれば、広い範囲で成立する可能性があります。
  3. (3)賭博場開帳図利罪又は賭博罪の幇助罪幇助に該当しうるコンテンツの例コンテンツ内において、ユーザー間において賭博罪が成立しうる場合、すなわちユーザー間で。「偶然の勝敗」により、「財物等の得喪を争う」行為が行われる場合には、当該ユーザーの行為が賭博罪に該当するとともに、当該コンテンツを提供するパブリッシャーにも賭博場開帳図利罪又は賭博罪の幇助が成立する可能性があります。たとえば、コンテンツ内でユーザー同士が対戦する場合に、敗北したユーザーが勝利したユーザーに暗号資産やNFT等を引き渡すような内容の設定が可能であり、そうした機能がユーザーによって利用された場合には、これらの罪が成立する可能性があります。これに対し、コンテンツ外において、ユーザー同士が賭博行為の一環としてコンテンツを利用することを完全に防止することは事実上困難と考えられますが、コンテンツの設計を賭博に利用されやすいものとしないこととするとともに、利用規約においてコンテンツを賭博に利用することを禁止し、実際にコンテンツを賭博に利用する行為が発見された場合には、当該ユーザーへの警告を行うことや、可能な場合にはコンテンツ内のアカウントを停止する措置をとることなど、可能な限りユーザー間で賭博罪に該当する行為が行われることを防止することが必要と考えられます。

4.景品表示法違反のコンテンツ

不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)上の「景品類」に該当する場合、景品付与の方法により、付与できる景品の最高額及び総額の上限が、それぞれ下表のとおり定められています。「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益をいいます(景品表示法2条3項)。また、「懸賞」とは、サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することをいいます。懸賞のうち、共同懸賞とは、一定の地域において一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合等をいい、それ以外のものを「一般懸賞」といいます。「総付景品」とは、「懸賞」によらずに提供される景品(ユーザーにもれなく提供する場合等)をいいます。

(景品付与の方法ごとの景品類の上限規制)

景品付与の方法 取引価額 最高額 総額
一般懸賞 5,000円未満 取引価額の20倍 懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上 10万円
共同懸賞 取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%
総付景品 1,000円未満 200円
1,000円以上 取引価額の10分の2

パブリッシャーは、アニカナ上のコンテンツに関する取引に付随して利用者向けに景品類の提供を行う場合には、上記の景品表示法上の規制を遵守してこれを行う必要があります。

5.ノミ行為となるコンテンツ

競馬法は、中央競馬の競走若しくは地方競馬の競走又は日本中央競馬会、都道府県若しくは指定市町村が勝馬投票券を発売する海外競馬の競走に関し勝馬投票類似の行為をさせて財産上の利益を図った者を、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処することを定めています(同法30条3号)。これはいわゆる施設馬券屋(ノミ屋)が行うノミ行為に対する罰則を定めたものです。また、競馬法は、ノミ屋を利用した者も、100万円以下の罰金に処することを定めています(同法33条2号)。したがって、パブリッシャーは、アニカナ上のコンテンツにおいて、現実の競馬レースに関する馬券の販売その他これに類似する行為をすることはできません。
また、ノミ行為に対する処罰規定は、競艇に関するモーターボート競走法(65条2号)、競輪に関する自転車競技法(56条2号)、オートレースに関する小型自動車競走法(61条2号)にも存在します。したがって、競艇、競輪、オートレースに関しても、アニカナ上のコンテンツにおいて、現実のレースに関する投票券の販売その他これに類似する行為をすることはできません。

6.資金決済法違反のコンテンツ

コンテンツ内で取り扱うデジタル財産が資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)に定める暗号資産に該当する場合、その売買・交換、それらの媒介・取次ぎ・代理、又は他人のために暗号資産の管理を業として行う者は、暗号資産交換業者としての登録が必要となります(資金決済法63条の2)。

暗号資産とは、下表における1号暗号資産の要件又は2号暗号資産の要件を満たすものをいいます(資金決済法2条5項各号)。

(暗号資産に該当するための要件)

1号暗号資産の要件 2号暗号資産の要件
個別の要件 不特定の者に対して物品・サービスの代価の弁済のために使用可能であること 不特定の者を相手方として1号暗号資産と相互に交換可能であること
不特定の者を相手方として売買可能であること
共通の要件 電子的方法により記録されていてインターネットで移転可能であること
通貨又は通貨建資産ではないこと
電子記録移転権利(金融商品取引法2条3項)ではないこと

暗号資産の具体例としては、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)等のブロックチェーン上のFT(Fungible Token=代替可能なトークン)が多く挙げられます。コンテンツ内において、法定通貨と連動しない独自の価値を有するFTを発行する場合、暗号資産に該当する可能性があります。FTが暗号資産に該当する場合、売買や他の暗号資産との交換を行うことに加えて、コンテンツ内でユーザーのためにFTを管理することも暗号資産交換業に該当します。

なお、アイテムやキャラクターに結び付いたNFTのように、トークンがNFTの形式をとっていて、決済手段としての機能を有しないものについては、暗号資産には該当しない可能性もあります。ただし、技術的にNFTとして発行されていたとしても、同内容のトークンが多数存在し、決済手段として利用可能であるような場合には暗号資産として評価される可能性がありますので、留意が必要です。

パブリッシャーが暗号資産交換業者として金融庁に登録されている場合を除き、アニカナ上で暗号資産交換業に該当するコンテンツを開発・提供することは禁止されています。

また、コンテンツ内通貨その他のコンテンツ内で用いられる決済手段については、資金決済法上の前払式支払手段(資金決済法3条1項)又は為替取引(銀行法2条2項2号、資金決済法2条2項)に該当する可能性があります。パブリッシャーは、コンテンツ内で用いられる決済手段について、資金決済法及び銀行法に違反しないことを確認する必要があります。

7.ネズミ講又はマルチ商法に該当するコンテンツ

  1. (1)ネズミ講ネズミ講は、法律上は無限連鎖講として定義されており、無限連鎖講を開設し、若しくは運営し、無限連鎖講に加入し、若しくは加入することを勧誘し、又はこれらの行為を助長する行為は禁止されています(無限連鎖講の防止に関する法律3条)。

    無限連鎖講とは、金品(証券・証書を含みます。以下同じ。)を出す加入者が無限に増加することを前提として、先に加入した者(先順位者)がこれに連鎖して段階的に2以上の倍率をもって増加する後続の加入者(後順位者)が出す金品から、自己の出した金品の価額又は数量を上回る金品を受け取るという仕組みの金品配当組織をいいます(同法2条)。

    ゲームの名を借りていても、実質的にネズミ講(無限連鎖講)と同様の仕組みを有するものについては、アニカナ上での開発や提供は禁止されます。
  2. (2)マルチ商法・ネットワークビジネスマルチ商法やネットワークビジネスは、法律上は「連鎖販売取引」として定義されており、無限連鎖講と異なり、連鎖販売取引を行うこと自体は法律上禁止されていませんが、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」といいます。)で厳しく規制されています。

    連鎖販売取引は、個人を販売組織の加盟者(メンバー)として勧誘し、更にその個人に次の加盟者の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う取引をいい、特定商取引法上は、①物品の販売又は有償で行う役務の提供などの事業であって、②再販売、受託販売若しくは販売のあっせん又は同種役務の提供若しくは役務提供のあっせんをする者を、③特定利益が得られると誘引し、④特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするものをいうと定義されています(特定商取引法33条1項)。

    上記のとおり、連鎖販売取引は法律上直ちに禁止されるものではありませんが、連鎖販売取引の中には実質的に無限連鎖講と同視されるものも多く、いずれは新規加盟者の獲得に失敗する加盟者が出現することが予期できる場合が多いことなどから、トラブルの温床となりやすいと考えられます。また、特定商取引法上厳格な規制が課されており、アニカナ上でこれを遵守することは容易ではないと考えられることなどから、アニカナ上で連鎖販売取引に該当する内容を含むコンテンツを開発・提供する行為は禁止されます。

8.その他違法又は不適切な内容のコンテンツ

上記2.から7.において、アニカナ上での開発・提供が禁止されるコンテンツの内容について例を挙げて説明しましたが、この他にも、その提供行為が違法又は不適切と評価されるようなコンテンツのアニカナ上での開発・提供は禁止されます。たとえば、アニカナ上で、合理的な理由なくユーザーにNFTを売買・交換等させ、パブリッシャーが手数料を得るような内容のコンテンツを開発・提供する行為は不適切であり、禁止されます。

9.まとめ

各パブリッシャーが開発・提供するコンテンツの適法性や適切性については、上記の違法又は不適切と考えられる典型的な類型を参考に、パブリッシャー自身の責任においてご判断ください。パブリッシャーがアニカナ上で開発・公開したコンテンツに関しトラブルや法的責任が生じた場合であっても、アニカナの開発者その他いかなる関係者も、違法又は不適切なコンテンツの開発・提供について責任を負うものではありません。

以上